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NY TDCでの受賞。
(NY Typo Directors Club)
YouFabの8年の挑戦

2022年3月30日

2022年の3月30日に今年のニューヨークTypo Directors Club賞の受賞作が発表されました。FabCafeが主催するGlobal Award「YouFab」のポスターは、2部門でCertificate of Typographic Excellenceを受賞。YouFabの受賞は、2018年のポスターが、D&AD2019で入賞、ONE SHOW-DESIGNで銀賞を受賞して以来3個目の受賞になります。

2014年からこのアワードの成長にコミットしてきた自分にとって、この受賞の流れは特別な意味を持っていました。このアワードがグローバルアワードとして認知・成長していくには、告知ポスターのクリエイティブが重要だと考え、そのクリエイティブレベルの向上に力を入れてきたからです。

クリエイティブアワードを大きく育てるために重要な2つのこと


アワードをメジャーなものに育てるために必要なこと、2つあると思っています。

ひとつ目はシンプルに、アワードに集まる作品の質を向上させること。アワードの質は、エントリーされる作品の質がそのままそのアワードの質となって伝わります。毎年の受賞作品の並びを見て、人々がスゲーなってシンプルに思えるかどうか。エントリーする人たちが、受賞作にレベルの高さに一定のリスペクトの気持ちをいだけるかどうか。その賞を受賞することを誇りに思えるかどうか。YouFabのチェアマンになって最初にスタッフと話したことは、世界中で活動する優秀なFab系クリエイターに直接コンタクトして、参加を働きかけること。優秀な大学の研究室に働きかけて、参加を呼びかけること。ナンパです。ダイレクトプロモーションです。これ、手間もエネルギーもかかりますが、効果は大きいです。相手も一定のリスペクトをもって誘いにきていることがわかりますから、嫌な気持ちはしません。もちろん、福田も自分のネットワークに働きかけます。声がけしたすべてがエントリーをしてくれるわけではありませんが、一定の打率でエントリーに結びつくことは確かです。エントリーフィーを無料に設定しているのも、そのあたりに背景があります。受賞作品がどんな幅のどんな作品によってラインナップされていくのか。その様をイメージしながら、戦略的声がけを続けていきます。

そしてもうひとつが、告知ポスターのクリエイティブ。今時ポスターなんて効くのかと思われるかもしれませんが、結構効くと思っています。貼られる場所は、世界中のFabCafeの拠点以外では、世界中の大学の掲示スペースが中心。そうしたスペースには、多様なデザイン賞の告知ポスターが貼られているのですが、その一群の中で確実に抜きん出た表現になっていれば、「この賞、いったいどこの何の賞だ?」ってなる確率はとても高い。東京の渋谷の小さなカフェが主催している新興の賞であっても、数10年の歴史をもつ権威ある賞に負けない一流感をもって伝わっていくことになります。1つ目の施策で個人やゼミ単位のダイレクトアプローチも同時に行われていますから、このポスターを目撃することで、さらに参加のモチベーションは大きく醸成されることは間違いありません。


クリエイティブレベルを証明するための国際デザイン賞アタック


グローバルアワードであれば、求めたいのは世界レベルでの高い評価です。ですから、YouFabのポスターでは、それが必ず国際的デザイン賞で受賞対象になるレベルを目指してきました。賞を獲りにいくことを、戦略的に、マーケティング活動の一環として実践するのです。国際的デザイン賞で上位受賞すれば、そのクリエイティブレベルは高く評価されます。高く評価されれば、世界のクリエイティブをリードする層の人たちにアワードの存在が認知されます。そこから評判は高まります。それは賞の信頼感を醸成し、エントリーを躊躇していた人の肩を押す効果をもたらします。クリエイティブコンペティションは世界中に存在し、それぞれがその存続をかけた戦いをしているという意味では、一般的ブランドマーケティングと状況は同じなのです。ただ、運営予算が潤沢にないのはどこも同じですから、金ではなく、クリエイティブの力で露出を大きくしていく作戦がとても重要になるのです。

クリエイティブクオリティを担うのは、SHAのチーム。


そのクリエイティブクオリティを担ってきたのは、SHAという中目黒のデザインエージェンシー。小さな集団ですが、この数年、福田が関わるほとんどの仕事のデザイン業務を担当してくれている優秀な会社です。代表の竹林くん、ADの伊佐さんを中心にそのクオリティレベルを高く維持することに貢献してくれてきました。

国際レベルのデザイン賞で確実に成果をあげていくには「なんとなく」なクリエイティブにしないことが大切です。デザインにおける「新しい」の意味を論理的、戦略的に考えることです。デザインは、その100年以上の歴史の中で多様な変化の波にさらされながら、脈々と続いてきた「文脈」をもって今に至ります。一言でデザインと言っても、そこにはタイポグラフィーという文脈やイラスト表現という文脈、記号デザイン文脈やブランドデザインという文脈など、いつかの太い文脈に分岐しながら流れてきているのです。自分たちは、そこにどう自分達でなければ立てられない旗を立てられるのか。その可能性を深く考えるのです。

YouFabがアタックしてきたのは、タイポグラフィー文脈。文字文化という人の知の歴史とも深く関わってきたアカデミックな文脈に、この10~20年で進化してきたコンピュータプログラムが生み出す文字デザインの可能性を掛け合わせようという挑戦です。歴史とともに流れてきた伝統的なデザイン文脈に、新規開発された造形マシンやプログラムアルゴリズムが実現する進化をいかに大胆にぶつけられるか。時代を象徴する道具は、文字文化をどんな姿に変貌させられるか。そこが勝負です。

世界を代表するアルゴリズムデザインの達人とともに


このアワードシンボルであるYとFを組み合わせたロゴをモチーフに、多様なアルゴリズム系クリエイターとのコラボレーションを毎年試みてきました。

2016年は、Plottterという製図図面専門のドローイングマシンをハッキングした作品で有名な深地宏昌さんとのコラボレーション。コンピュータプログラムで作成した細密なYとFのタイポグラフィーをPlotterというマシンに描画させてつくっています。作品は、リアルなドローイングマシンのリアルな出力の味もポイントになります。超細密な線が微妙なカスレを生み、デジタルでありながら独特の風合いが表現されています。

2017年は、コンピューテーショナルデザインの日本の第一人者、堀川純一郎さんとのコラボレーション。プログラム上で硬質の物質として造形されたYとFのタイポグラフィーが一定の物理条件で衝突し崩壊する一瞬を描き出しています。

2018年は、コンピューテーショナルデザインの日本のトップスター、Qosmo堂園翔也さんとのコラボレーション。堂園さん作の液体の振る舞いのアルゴリズムによって、YとFの2文字は、弾け散る直前の動的な奇跡の一瞬を見事に定着させています。

2019年は、高度なプログラム技術でアート領域を牽引してきた世界的なアーチスト、ザック・リーバーマンが引き受けてくれました。な、なんと、です。東京のちっぽけなカフェの仕事依頼を、です。それまでのコンピューテーショナルデザインでのチャレンジが評価された成果かもしれません。YとFの2文字がアーティスティックに変化を繰り返すプログラムをつくってくれました。納品はアプリ形式。デザインチームはそのアプリを動かしながら、もっとも魅力的な一瞬を定着させたのでした。

そして2021年は堀川さんに再度サポートいただき、北千住デザインさんとのコラボを実現。いくつかのルールで増殖する細胞増殖のアルゴリズムでYとF2文字が姿を現すプログラムをつくってくれました。北千住デザインさんのTwitterページに行くと、YとFの増殖のアニメーションが見られます。

自分達のクリエイティブ資産であるロゴにシンプにこだわり、フラットな平面デザインとして初期スタートしたYFが時代クリエイターの手によってさまざまに姿を変えていく様は、僕たちにとっても刺激的であり、学習に富んだ経験となってきたのでした。


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2021 YouFab Poster1

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2019 YouFab Poster

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2018 YouFab Poster

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2017 YouFab Poster

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2016 YouFab Poster