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第3回奥能登国際芸術祭、
この秋9月2日から開催されます。

記事:2023年01月01日

奥能登国際芸術祭は、第3回目開催を迎えます。


第3回奥能登国際芸術祭が9月2日に開幕します。
前回開催が、コロナの影響で1年延期されたため、トリエンナーレでありながら2年のインターバルで第3回が開催される変則的運用となりました。第3回の開幕は、2023年9月2日。10月22日までの約40日間の開催となります。2015年の準備段階からコミュニケーション領域のサポートをしてきた777は、第2回終了後から程なくして第3回の準備に入っていました。 大地の芸術祭のお手伝いをした2005年から数えると17年。間に休眠期間を挟みながら続けてきた地域芸術祭の支援。近年強く意識している課題は、「地元はいかに自走できるか」です。

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奥能登 珠洲から日本海をのぞむ

そもそも、地域芸術祭って?


そもそも芸術祭って何なんでしょう。日本には現在、数100を数える地域芸術祭があると言われています。もはやそれは、1県1つというレベルを超えて、ものすごい数とバリエーションが小さな島国にひしめき合っている状況。そりゃあもうすごいわけです。日本にはどんだけたくさんアートファンがいるのか。日本はアートの楽園なのか。いや、そんなことはありません。美術系の専門雑誌購読者数も多いわけではなく、アーチストが楽に食べていけるビッグ市場があるわけでもなく。おそらくその流れは、地域活性の目的で地方に交付される補助金や助成金の使い方として、いい感じに今時で、いい感じにアカデミックで、いい感じに盛り上がりそうで、いい感じに雇用を生みそうで、いい感じにサステナブルで、という行政のツボを「いい感じに」押してくれるものであるからだと想像されます。しかしながら、現実はまったくもって厳しいわけで。そうして立ち上がる芸術祭の多くは、企画書で書かれた効果をあげられないままひっそりと閉幕しているものも多いのが現実です。

そんな地域芸術祭。百家争鳴の時代に福田は奥能登プロジェクトに呼ばれたわけで、福田のなかでも「芸術祭乱立の時代になぜフラムさんは新たな芸術祭を立ち上げるんだろう」「珠洲で開催する特別な意味って何なんだろう?」といった問いとともにその仕事をお受けしたのでした。

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珠洲 愛宕神社 獅子舞奉納

珠洲は、日本の特異点である。


珠洲はとても不思議な場所でした。海があり、山があり、自然の恵みがあり。ずっと昔から続いてきた暮らしがあり、文化があり、伝統があり、工芸があり。さらには、日本海に突き出した半島の先っちょという特別な地理的環境があり、海に囲まれた岬の独特の景色があり、日本海交易が盛んだった時代のユニークな歴史的背景があり、大陸との関係があり、独特の神様文化があり、先祖から受け継いできた祭文化があり。いろんなユニークネスがありすぎて一言ではあらわしにくい。北川フラムさんが珠洲を「日本の特異点」という言葉で表現した背景には、そこにある多層的多面的ユニークネスを感じたからなのだと思います。なかでも印象的だったのは、太平洋側で進行した日本の近代化の流れから取り残された結果、いろんなものが近代化以前の姿のままにフリーズドライされていること。都市化の恩恵を受けることもなかった代わりに、都市の短期的スクラップ&ビルドの流れに巻き込まれることなく、近代化前の淡々とした暮らしと時間と文化が維持されてきたこと。

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能登鉄道の旧駅施設

サイトスペシフィック。


新潟十日町で越後妻有トリエンナーレを成功させ、地域芸術祭が日本でブームになるきっかけをつくった北川フラムさんは「サイトスペシフィック」という言葉をよく使われます。サイト=場所、スペシフィック=固有の。その土地に固有の、という意味のこの言葉は、フラムさんが総合プロデュースされる芸術祭全てに踏襲され、この考え方がフラムさんがつくる地域芸術祭を特別なものにしているのだと思います。

通常、美術展示は、キュレーターが組み立てたコンセプトにあわせて作家と作品がキュレートされ展示計画がつくられます。サイトスペシフィックの考え方に沿うと、その出発点はサイト=地域。越後妻有も奥能登も、北川フラムさんが感じた地域固有のユニークネスが出発点となり、そこからすべてが始まります。それは、文化的ユニークネスであったり、歴史資産的ユニークネスであったり、自然資産的ユニークネスであったり、建築文化的ユニークネスであったり、民芸資産的ユニークネスであったり、地域芸能的ユニークネスであったり、食文化的ユニークネスであったり。そしてフラムさんが感じ取ったそうした地域ユニークネスが招聘アーチストに伝えられ、アーチストを現地に案内し、彼らは、彼らなりの解釈で作品がつくっていきます。

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地域価値 伝搬のストラクチャー


下は、第一回奥能登国際芸術祭の深澤孝史さん「神話のつづき」という作品。大陸に向かって突き出すように位置している能登半島は、昔々から大陸からの漂着物が流れ着く場所で、漂着物を通じて大陸文化感じてきた珠洲の人々は、漂着を信仰対象として拝む文化が育っていったんですね。深澤さんは、北川フラムさんから受け取ったそんな珠洲の文化的ユニークネスを、リアル漂着物によって造形する鳥居という作品に着地させています。

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第一回作品:深澤孝史「神話のつづき」

奥能登国際芸術祭の常設展示作品にもなっているトビアス・レイベルガーの作品「Something Else is Possible/なにか他にできる」は、廃線になった能登鉄道の終着駅・蛸島駅の旧駅舎と旧軌道を作品の一部にとりこんだとてもユニークな作品です。廃線駅舎って、たった15年前のことであっても、すでにそれは「遺跡」なんですね。レイベルガーは、フラムさんに案内された「遺跡」に強いインスピレーションを感じ、時代展望台のようなオブジェから望遠鏡を覗くと、終着駅の行き止まりに掲げられた「Something else is possible」というメッセージが見えるというスペシャルな作品をつくっています。

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常設作品:トビアス・レーベルガー「Something else is possible」


第二回に参加したトゥ・ウィチェン(台湾)は、奥能登に語り継がれてきた鯨にまつわる伝承をもとに作品をつくりました。珠洲の大谷地区には、巨鯨魚介類慰霊碑という不思議な石碑があります。食の危機に見舞われたある時期に、浜に打ち上げられた鯨が地域の食の危機を救ったことから建てられた石碑だそうで、奥能登にはこうしたイルカや鯨にまつわる史実や伝承が多数存在しています。そんな話をきいたトゥ・ウィチェンは、日置地区の一角に大きな穴をほり、なんちゃって化石発掘現場を作りだします。体長数10メートルの大きな鯨の骨の出土現場が出現。フェイクをフェイクとして楽しむアートを通じて、珠洲の地域固有の物語を体験します。

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第二回作品:トゥ・ウィチェン「クジラ伝説遺跡」

第一回に参加し常設作品となっているラックス・メディア・コレクティブの「うつしみ」は、能登鉄道の旧駅舎をトビアスともまた違った解釈とインスピレーションで作品に昇華させています。旧上戸駅舎の上に幽体離脱するかのように浮き上がる駅舎のうつしみ。駅舎の亡霊とも未来を予見するイメージともとれるその作品は、場所やものが包含する特別な記憶や思い、妄想といった非物質的なものの意味を表現しています。

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常設作品:ラックス・メディア・コレクティブ「うつしみ」

第一回に参加したアーチスト集団 Ongoing Collectiveが「奥能登口伝資料館」という企画で制作したのは、メンバーが地元の人に時間をかけて取材をした内容をもとにつくった映像作品の数々。その中の一つ「村にUFOを誘致する」は、珠洲の人たちを出演者に村がUFOを誘致する物語を描いていたのですが、その映像が口伝していた内容は、珠洲に一時代訪れた原子力発電所誘致。ひとことも原発という言葉は出てこない映像の中で、地域を分断するほどのインパクトをもった一事件を、象徴的に表現していました。

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第一回作品:オンゴーイング・コレクティブ「奥能登口伝資料館」より

地元が考え、地元がつくり、地元がデザインし、地元が運用する。


こうして見ていくと地域芸術祭って、あらためて面白いって思いませんか。そうなんです。フラムさんの設計する地域芸術祭は、そこが面白いんです。アートが媒介になって伝わっていく「日本」の意味を再確認する工程がとても新鮮でありインスパイアリングであるんです。

今年奥能登国際芸術祭は、第三回を迎えます。最初に書いた通り、今回のウェブチームテーマは「地元の自走」。芸術祭という装置が僕らの力を離れてもちゃんとサステナブルなものになっていくように、地元スタッフが企画し、地元スタッフが設計し、地元スタッフがデザインし、地元スタッフが構築する。それを一定以上のクオリティで実現できるように基盤と体制をつくります。地元事務局スタッフは制作会社スタッフとは違います。特別な教育を受けているわけではありません。実制作の経験があるわけでもありません。もちろんシステム知見があるわけでもありません。そうした体制でも、自分たちでやっていける流れが実現する仕組み、ツール、メソッド、もろもろ。福田の腕が問われる一年になりそうです。

あ、そうそう。第3回も福田が設計する芸術祭ツアーが企画されます。福田が福田の言葉で福田が設計したコースに沿って奥能登をめぐる2泊3日のツアーです。夏前に、ツアー詳細を発表しますので、みなさんぜひ、ご参加ください。下の画像は、前回の福田ツアーの実施案内です。

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第二回芸術祭 福田ツアーの案内