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恵比寿映像祭、12年のひと区切り

記事:2022年9月22日

2021年、そのスタート以来担当していた仕事が節目を迎えました。2009年に第一回がスタートし、今も続いている東京都立恵比寿写真美術館のフラッグシップイベント「恵比寿映像祭」。福田は、その立ち上げから12年、クリエイティブディレクターとして、そのブランドイメージ設計から毎年のクリエイティブの方向づけまで、丁寧に向き合い、集客のお手伝いをしてきました。

芸術祭的なイベントは、日本全国の数多くの美術館で実施されてきたに違いないもの。その美術館を象徴するテーマで年に一回行われる祭典が、その美術館活動の今を発信するものであり、活動プレゼンスを高めるものであり、年間来場者の底上げをはかるものであり、美術館のある地域との絆を深めるものであり。その目的はそれぞれに違えど、どこでも重要となるのは、限られた予算を取り回しながら、イベントブランドとしての固有の顔をどう作っていくか、そして毎年の継続のなかで、イメージの効果的蓄積をどう図っていくかにあると思います。

初年度の重要な仕事、太いコンセプトづくりと表現スタイルの確立


こうした公的施設のレギュラーイベントは、そもそもコミュニケーション予算がない。あ、失礼。ないと思った方がいい。ってなると、そのコミュニケーション活動の効果的蓄積のためには記号の作り方やコミュニケーションスタイルの確立は結構重要になってきます。ポスターを見ただけで「あ、○○芸術祭の季節が今年もやってきたなあ」って思ってもらえることが重要だからだし、そうした流れをつくることによって、2年3年〜5年と続けていくことで積み上がる蓄積価値も高まっていくことにもなるからです。

また、芸術祭仕事において、ポスターは重要ツールです。なぜならポスターは、美術館ネットワーク、お役所ネットワーク、大学ネットワーク、NPOネットワークなど、関連するネットワークの主要掲出場所に無料で掲出してもらうことが可能なツールだからです。その場所も全国に多数存在しますから、その数も馬鹿にならない。もし全てが有料広告メディアだったら、相当な金額になることが想定されるのです。もちろん、そうした掲出場所も、多様な関連団体が掲出を希望するわけですから、ただ送付すれば貼ってくれるわけではありません。あまた存在する掲出候補の中でも「これは!」と思ってもらえる存在になることが重要になります。そのためにも、芸術祭コミュニケーションは、ポスターという基本フォーマットのなかで「コンセプチュアルに」「高い時代的クオリティを保つ」ことが大切になるのです。

北山創研さんが果たしてきたデザイン領域の重要な役割


恵比寿映像祭の仕事は、そのスタート時から、北山創造研究所さんが参画し、デザイン部分を支えてくださっていました。その骨太なデザイン設計がこのプロジェクトを強くすることに大きな意味をもってきたことは言うまでもありません。第一回立ち上げで出会った時から、ADの飯島さん(現在はドゥービーカンパニー代表)、デザイナーの右田さん(現在は右田図工の代表)のお二人と知恵を出し合いながらすすめられたことはとても刺激的で体験でした。

映像祭のシンボル記号となっている(       )デザイン。このアイデアもAD飯島さんのアイデアです。恵比寿映像祭ならではの表現スタイルって、どんな風につくれるのかねえ、とあれこれブレストする中で、映像祭ロゴにも入っている「For Art And Alternative Visions(写真の芸術的およびもうひとつのあり方)」の意味を象徴する記号として(        )アイデアを飯島さんが持ってきてくれたのでした。文字もグラフィックも間に存在しないカラの(       )。この記号を通じて人々は、世界に多様に存在するビジュアル作品をイメージし、そうした多様な存在を(     )で挟んでいくことが、この祭典の意味なんだ、ということを理解するのです。通常、文章の中にさりげなく存在している(      )に象徴化のデザインを施すことによって、人々はその特別な意味を感じ考える。デザインってすごいなあと、感心させられるクリエイティブでした。


クリエイティブディレクターの仕事


(     )の記号が決まって以降、クリエイティブディレクターとしてやるべきことは明確になりました。
1.(      )シンボルを中心に据えた表現に真摯に向き合い、映像祭クリエイティブのスタイルをつくること。
2.  キュレイターが提示する毎回のテーマワードを丁寧に解釈し、回ごとの鮮度を意識すること。
3.   コンセプチュアルでありながら、大胆な表現ジャンプを意識すること。
4.   自分たちのつくるクリエイティブが参加アーチストの作品に誤解されないことに注意を払うこと。
      そのためにも表現の真ん中に(       )を広告記号として置いて広告としての立ち位置を守ること。

基本設計が極めてコンセプチュアルな仕事だったので、毎回のテーマに沿ったウェブ表現は、自由な視点でユニークなジャンプを実現できるスタッフをアサインしてのぞんでいました。初回はADの吉原潤さん、2回目から8回目まではADでありプログラマーでもある加藤潤一さん、9回目以降は茂出木さん率いるTwotoneチーム。コンセプトづくりのフェーズから議論に参加いただき、アイデアをぶつけあってつくっていました。


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第一回恵比寿映像祭オフィシャルHPトップ

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第2回恵比寿映像祭ポスター

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第4回恵比寿映像祭オフィシャルHPトップ

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第5回恵比寿映像祭オフィシャルHPトップ

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第7回恵比寿映像祭ポスター

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第10回恵比寿映像祭ポスター

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第13回恵比寿映像祭ポスター